第59章 奇行種、奔走
別にクレアの行動を咎めたかったわけではないのだが、自分以外の男のために手料理を振る舞うなど、リヴァイは少々…ではなく、だいぶ面白くなかった。
「エルヴィン…クレアは調理場の職員に気を遣って、やむを得ず作ったんだ。変な勘違い起こすんじゃねぇぞ。それと…残さず食えよ…」
「ハハ…大丈夫だよリヴァイ。ちゃんと分かってるつもりさ…」
「…ん?なんじゃ、なんかマズイ事でもあるのか?」
「なんでもねぇよ……」
何の事情も知らないピクシスが2人の顔を見るが、リヴァイは不機嫌に返事を返しただけだった。
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エルヴィンの食事が済むと、さっそく本題に入る。
「…とまぁ、正確に言えば我々はその1週間でウォール・ローゼは安全じゃと言い張るしか他なかった。今は避難民も元の土地に帰っておるが、これ程の混乱の最中に兵力を行使したのは1件のみ。元々旧地下都市にいた不法住民が立ち退きを命ぜられ…一部の地区で憲兵と衝突しおった。」
旧地下都市とは、リヴァイが生まれ育った“地下街”の事だ。
立ち退きを命じたのは憲兵団で、調査兵はその任務に当たらなかったため話にしか聞いたいなかったが、ローゼが巨人によって突破されれば、一部の地区での小競り合いでは済まなくなる。
その現実に言いようもない焦りの感情が込み上げてくる。
早くなんとかしなければ、壁内は取り返しのつかない事になってしまうだろう。
「死者こそでんかったが、その事件が壁全体二与えた影響はでかかったのう…地獄の釜が一瞬蓋を開けたのを見たのじゃからな。皆が身をもって確信したよ。ローゼ崩壊後は1週間の猶予を経て人間同士の殺し合いが続くのだとな…」
これ以上人間の住む領域を侵されれば、いずれ人同士の争いになり、人類は滅亡するのは確実だ。
もうこれ以上謎を深めることも、侵略を許すわけにはいかないのだ。