第59章 奇行種、奔走
「?そういやクレア…何を持ってきた。」
リヴァイはクレアが両手で持っているトレーが目に入り問いかける。
「あ、こ、これは…団長の意識がお戻りになったので……何か召し上がった方が良いかと思い持って参りました。」
「そうか…」
よく見るとトレーに乗っているスープカップからは湯気が出ていた。
「団長、じゃがいものポタージュですが…どうですか?」
「わざわざ私のために持ってきてくれたのか?ありがとう。せっかくだから頂こう。」
「は、はい!!」
クレアはエルヴィンの膝元にトレーを置いてやると、左手にスプーンを持たせてやった。
「ん、美味いじゃないか。さっそく元気が出てきそうだ。ありがとうクレア。」
「あ…それはよかったです…」
すると、リヴァイがさらに不機嫌そうな声で呟く。
「おい…それはお前が作ったな?」
「……!!」
…なんで分かったのだ。
なんとなく自分が作った事は伏せておいた方がいいだろうと思ったため、そのあたりについては話さなかったのだが、何故リヴァイは分かったのだ。
エルヴィンの横に立ったままクレアは何も言い返せずジトリ変な汗をかいてしまう。
「図星だな…ったく、じゃがいものポタージュ、よく食堂ででるメニューだが、こんな濃厚な香りはしない。職員以外で料理の得意なヤツが作ったに決まってるだろう。」
「あぁ、あの…えと…最初は調理場の方に頼んだのですが、お昼の準備でお忙しそうだったので…私が作りました…」
「チッ…そうかよ…」
クレアがエルヴィンに、しかも“個人的”に手料理を振る舞うなど、なんとも不愉快極まりない話だ。
しかし、エルヴィンは怪我人、そして調理場の職員はクレアが料理が得意な事は知っているのだ。
昼の準備で調理場が忙しければクレアが作るのが自然な流れだ。