第59章 奇行種、奔走
料理も手際良くこなせるクレア。
ポタージュを作るなど、わけなかった。
20分もするも、濃厚でクリーミーな香りが湯気と共に厨房内に漂い始める。
「こんなものかしら……」
牛乳でのばしながら滑らかになったじゃがいもに少し味をつけると、クレアはスープカップに入れて乾燥パセリを散らした。
「ん?もうできたのか?」
「いい匂いだなぁ!」
皆興味津々に覗き込んでくる。
「は、はい。出来上がりました。調理道具ありがとうございました。」
覗き込んでくる職員に頭を下げながらササッとなべや包丁など洗って定位置に戻すと、スープカップとスプーンをトレーに乗せて厨房を出て行こうとしたのだが…
「なぁ…クレア、本当に調理場に転職する気はないか?ここなら壁外調査ないぞ?」
「えぇ?!」
その料理の腕を見込まれてか、何度めかの勧誘を受けたクレア。
彼等は本気で転職して欲しそうだった。
「た、確かに壁外調査はありませんが、私は心臓を捧げた兵士でありますので…お気持ちだけ有り難く受け取らせて頂きます…」
「なかなかつれないなぁ…ま、この先クビになる様な事があったら迷わずここに来な。歓迎するぜ!」
そう言うと、フンと鼻を鳴らしながらグッと親指を立てられた。
「あ、ありがとうございます。でも…なんだかクビになって欲しそうに見えるのは私だけでしょうか…?」
「ハハッ!!バレてたか!!」
「わ、私はハンジさんの側でこの命尽きるまで戦うと誓ったのです!志半ばで死ぬ事は勿論ですが、クビになる様な事はしませんので、お気持ちだけ頂戴いたしますね!!」
「また何かあったら遠慮なく来な〜!」
クレアは名残惜しそうに引きとめる言葉に見送られながら調理場を後にした。
「そもそも、調査兵団をクビになる様な人間を調理場で働かせるなんて…そんな事ありえないのに、みんな酷いなぁ…」
クレアはブツブツと文句を言いながらエルヴィンのいる部屋へと向かった。