第59章 奇行種、奔走
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「ふぅ…やっと終わった……」
クレアは朝食後、任されていたハンジとモブリットの馬の世話をして一段落すると、再び食堂にきていた。
「お昼ご飯の準備が始まってる所すみません…実は今朝団長の目が覚めたんです。何か消化にいい軽食を作って頂く事はできませんか?」
クレアは1週間もの間眠っていたエルヴィンのために、何か食事を持って行こうと考え、食堂まで来た様だ。
「ん?クレアかい?団長目が覚めたの?容態は?」
「今朝目が覚めた時は発熱もなく、落ち着いてました。ちょうど先生の診察も終わった頃だと思います。」
エルヴィンの無事を聞いて、食堂の職員もみな安堵の表情になる。
「そうか…本当に良かった。そしたらクレア。ここに仕入れてきたばっかりのじゃがいもがあるんだ。ポタージュだったらすぐにできるんじゃないかい?せっかくだからクレアが作ってやれよ。」
「え?えぇ?わ、私がですか?」
「おうよ!病人食だろ?俺達みたいなムサイ男が作ったモンより、クレアみたいな可愛い嬢ちゃんに作って貰ったほうが団長も精が出るだろうよ!アハハハ!!」
「ちょっ、嬢ちゃんって…私はもう20歳になりましたし、これでも調査兵団の兵士ですよ!」
「あちゃ〜!そうだったなぁ!すまん!」
そんなやり取りに、周りのみんなも面白がり声を上げて笑い出した。
確かに食堂の職員は男も女も年齢層が高い。
しかしみな調理に関してはプロだ。
誰が作ってもエルヴィンの元気の源になる筈だ。
だが、職員もみな昼食の準備で忙しそうだ。
ポタージュくらいなら自分でもすぐに作れるだろう。
「もう…分かりましたよ。私が作りますので、こちらのじゃがいも、少し頂きますね。」
「いいよ〜、もうここの勝手は分かるだろ?好きに使ってくれて構わないよ。」
「あ、ありがとうございます…」
クレアは頭を下げると、小さめのじゃがいも3つ取り流しで洗い始めた。