第3章 衝撃的な出会い
翌日、昼休みの食堂。
今日はいつもより食堂が賑わっているように感じる。
特に女子の訓練兵がなんだかソワソワガヤガヤしていた。
クレアは昼食ののったトレーをうけとりテーブルに腰掛けると、パンをちぎって口に入れながら彼女達の会話にそっと耳を傾けた。
「エルヴィン団長くるの楽しみだね!」
「私、質問しちゃおうかな!」
「握手してくれるかな。」
そうだ…今日は午後の座学、調査兵団のエルヴィン団長が講義に来る日だった…
調査兵団は常に人員不足の割に希望者が少ない。
壁外調査で毎回大勢の死者が出るのだ。
希望者が少ないのも無理はない。
そのため、卒業が近い訓練兵に、広報と勧誘を兼ねて団長が自ら毎年講義に訪れているのだ。
エルヴィン団長は長身でスタイルもよく容姿端麗と言われている。
しかも長距離索敵陣形の実績もありカリスマ的存在。
調査兵団に入団の意思がなくても女性であれば一目拝んでおきたいところだ。
ふと改めて周りを見渡すと、鏡片手に髪の毛を整える者、香油をぬる者、挙げ句の果てに薄く紅を引いてる者もいた。
強烈な女子力に圧倒されたが、そそくさと食事を済ませ、クレアは午後の講義の準備にとりかかった。
講義開始10分前
クレアは黒板向かって左後方の窓の近くに座った。
教室にむわっと広がった女子の香油やら化粧品の匂いに耐えられなかったのだ。
うすく窓を開けると心地よい秋の風が入り込み、カーテンがハタハタと揺れている。
間もなく講義の時間だ。
しかしガヤガヤと教室の扉の外が騒がしい。
なんだかキース教官と誰かが揉めてるような声がする。
注意深く耳を澄ませると────
「──っおいハンジ!今朝の早馬ではモブリットが代理と聞いたぞ!」
「──分隊長!団長から代理を頼まれたのは私です!」
「──こんなおいしい役、モブリットずるいなー、ここは私に任せてくれちゃっていいからさ!アハハ!」
何事だろうか。
クレアは教室の扉を見つめながら静かに首を傾げた。