第59章 奇行種、奔走
「………!!」
そんなリヴァイの言葉に振り向くと、柔らかい表情とクレアは目が合った。
真顔にも見えたが、唇は緩く弧を描いている。
いつもの何か悪い事を考えている口元ではない。
クレアには優しく微笑んでいるようにも見えた様だ。
昨夜、自分が口走った内容を全て覚えている訳ではないが、欲望のままをリヴァイにぶつけたのは紛れもない事実だ。
そんな欲望まみれの我儘な自分をリヴァイは“悪くない”と言った。
そしてその表情はとても優しい。
自然とクレアの鼓動は速くなる。
「………」
「な、何だよ……」
その微笑んだ表情があまりにも珍しく、呆気にとられていたら、何かを察したリヴァイは少しバツが悪そうに視線をそらしてしまった。
「い、いえ……何でもありません。シャワー室、お借りします!!」
クレアはリヴァイの腕をすり抜けると、はだけた胸元を隠しながらシャワー室まで走った行った。
ーバタンッ!ー
「ったく…俺の話、ちゃんと理解できたのかあの奇行種は……」
耳まで真っ赤にしてシャワー室まで飛んで行ったクレアの後ろ姿に1つため息をこぼすと、リヴァイも立ち上がり兵服へと着替えを始めた。
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ーコンコンッー
「…失礼します。クレア・トートです。」
リヴァイの部屋でシャワーを浴びたクレアは大急ぎで自分の部屋まで戻ると、兵服に着替えエルヴィンが寝ている部屋に来ていた。
「あっ、クレア…おはよう!」
「お、おはようございます。団長、お変わりはありませんでしたか?」
「あぁ…昨夜も眠ったままだった…」
昨夜付き添っていた兵士がエルヴィンの容態を説明すると、クレアはさっそく包帯と点滴を変えるために白いエプロンを着て口元に布を当てた。