第58章 奇行種の魅力
普段の服装や美意識と同じくらい、クレアは恋愛においても控え目で奥手だった。
あまり自分の本音を言葉にして言ったり、衝動的に身体を求めてくる様な事もしない。
だから先程ポロリと溢れた言葉が妙に新鮮に感じたのだろうか。リヴァイは何度だって聞きたいと思ったし、クレアのそんな想いはとても心地良く耳に響いた。
「…許すも許さないもない……そんなお前が欲しいんだ。これからはもっとちゃんと言葉にして言ってくれ…」
再度素直な気持ちを聞けて気が済んだリヴァイは、両手首の拘束をしたままクレアの唇を奪った。
「ん…、んん……」
不意に重なった唇にクレアは目をギュッと瞑る。
クレアはあまり自分から何かを言う方ではなかったが、今は亡き戦友ペトラが遺してくれた言葉を胸に刻み込んでからは、割と意識をして自分の気持ちを伝えていた方だ。
それでもリヴァイにとっては足りなかったのだろうか。
いったいリヴァイは、どれ程の言葉を求めているのだろうか。聞いてみたいが唇を塞がれているため、それどころではない。
「ふぅ……ぅん……ん…ん…?、」
強引に、だけど優しく触れるだけの口付けを何度も何度も繰り返される。
いつもはすぐに深く舌を侵入させてくるのに、今日のリヴァイは角度を変えて啄むだけでそれ以上激しくしてこない。
しかし触れるだけの口付けは、リヴァイの唇の感触だけをダイレクトにクレアの神経へと伝へ、なかなか刺激が強かった。
少し冷たく感じたリヴァイの唇だったが、何度も重ねるうちに自身の熱が伝わり、どんどん熱を帯びてくる。
唇を介してお互いの熱を共有しているこの状況に胸が高鳴りどうにかなってしまいそうになったクレアは、リヴァイの背中に腕を回して思い切り抱きつきたくなってしまったのだが、自身の両手首は顔の横に沈められてしまっていて身動きができない。
この触れるだけの甘い口付けに焦れったさを感じたクレアは無意識のうちに下半身をムズムズとさせてしまっていた。