第58章 奇行種の魅力
「あ、あ、あの…その……」
「もう一度お前の口から聞かせてくれと言ったんだ。」
クレアの顔はみるみると赤く染まっていき耳まで真っ赤になってしまった。
握った手首からはトクトクと速くなる脈拍がリヴァイの手に伝わり、口は酸素を求めて水面に上がってくる魚の様にパクパクとしている。
こんな必死な姿を見せられてしまったらすぐにでも噛みつきたくなってしまうが、先程の話をもう一度クレアの口からじっくりと聞きたかったリヴァイはグッと我慢をした。
一方クレアは、リヴァイとは正反対にあんな子供じみた発言をした事を後悔していた。
いくら好き合っている仲でも、リヴァイはただの男ではない。
兵団の指揮にも深く関わる兵士長なのだ。
好きだという気持ちを伝えるにしてももう少し言葉を選ぶべきだったと、そう思っていたのだ。
「あの……ごめんなさい…私、兵長のお立場も考えずに…あんな事を…」
「おい、お前の言葉に気分を害したなど俺は一言だって言ってないだろう。それに2人きりの時くらい、俺の立場なんて考えなくていい。クレアが本当はどう想ってるのかもう一度聞かせてくれ…」
「そ、そんな……」
ー2人きりの時くらい立場など考えるなー
そんなリヴァイの言葉が胸に刺さったのか、クレアは少し震える声で呟いた。
「わ、私は…兵長がくださる優しさが、ずっと自分の物だけであって欲しいと…いつも思っております…」
「誰にも譲りたくないのか?」
「はい…譲りたくなどありません…私は…兵長をずっと独り占めしていたいです。こんな欲張りで我儘な私を…2人だけの時なら兵長は許して下さいますか…?」
なんだか言いながら涙が込み上げてきてしまった。
こんな幼い自分も、リヴァイは好きでいてくれるのだろうか。
クレアの大きな蒼い瞳は涙をためて不安げに揺れてしまった。