第58章 奇行種の魅力
そして物欲もなく、喜ぶ沸点も低い。
現にこうして誕生日をきちんと祝ってやれなくても、ケーキと露店の指輪で喜んでしまうのだ。
いつだって飾らず、無頓着なクレア。
そんなクレアだからこそ自分はアレやコレやと与えたくなるのだろうか。
美しい容姿にも関わらず、決して気どらず、多くを望まぬ慎ましい性格だから惹き寄せられるのだろうか。
なんにしても、今の自分はこんなクレアにいじらしさを感じ愛しさを一層募らせている。
奇行種クレアの魅力は計り知れない。
「女に贈り物をした事のない俺が言うのもなんだが…普通は高価な宝石とか貰うのが嬉しいんじゃないのかと思ったんだ…お前は、欲張らないんだな…」
「確かに高価な宝石は美しいですが、私はそうは思いません。兵長が選んで下さった物ならなんでも嬉しいですし…それに私は…私はとても欲張りですよ…」
「ん?どういう意味だ?」
「…兵長は、兵団みんなの憧れです。皆さん、兵長の強さに励まされて日々訓練を頑張っているのです。それに…憧れ以上の想いを寄せてる人もいます。」
「…………」
「で、ですから…私はきっと、この壁内にいる人間の誰よりも欲深くて欲張りな人間です。だって、こうして兵長の恋人になれて…手を繋いで歩けるのですから…そして、こうしていられる特権を、誰かに譲って差し上げる事なんてできません。ずっと、私だけのモノであって欲しいと願っているのです…独り占めをしたいのです…なので、私は欲張りで我儘で…傲慢な人間です……」
そう言うと、頬を染めてフイッと左を向いてしまった。
だが、繋いだ手からはまるで血液が沸騰したのでは無いかと思うほどの熱がダイレクトに伝わってくる。
まるで、クレアの気持ちを代弁しいるかの様に。
そんな反応をされてしまえば、なんとかおさえていたリヴァイの欲望の熱も沸々と上昇してしまう。
リヴァイは固く手を繋いだまま、歩くスピードを上げた。