第58章 奇行種の魅力
「……………」
再び手を繋ぎ歩き出したリヴァイとクレア。
クレアは繋がれていない左手の中指を黙って見つめては目を輝かせていた。
「……………」
自分が好きだからリヴァイも好きになってくれたキンモクセイの花。
しかし、キンモクセイは小さな花だ。
バラやユリの花の様に大きくて美しくて、アクセサリーのモチーフになるタイプの花ではない。
だからこんな所で偶然にもリヴァイが見つけてプレゼントしてくれた事がクレアにとってはとても嬉しかったのだ。
「本当は、もっと良い物を贈るべきだったよな…そんな安物ですまなかったな…」
指輪は純金ではなくメッキ。
そして、支払った値段からしてもオレンジ色の石に見えた物は恐らく硝子玉だろう。
仮にも兵団の兵士長を務める男が女に贈るにしては、あまりにもケチな代物だ。
それでも、見つけてしまったのだ。
クレアに似合う、オレンジ色に咲くキンモクセイによく似た指輪を。
表情は喜んでるように見えるが、本心はどう思ってるだろうか。
リヴァイは心の内は、らしくもなく少し不安になっていた。
「そんな…兵長、値段なんて関係ないです!!私、キンモクセイの花をモチーフにしたアクセサリーなんて見た事ありませんでした。だから…兵長が見つけて下さって、私に贈って下さった事が、とても嬉しかったです。沢山のケーキをご馳走して下さったのにプレゼントまで…本当にありがとうございました!!」
「…!!」
そう言いながらクレアはリヴァイを見上げ笑った。
小さく無邪気に咲き誇るキンモクセイの花の様に可愛らしく。
オレンジ色の太陽の様に眩しく。
そして、愛しく想う気持ちを昂ぶらせるあの甘い香りの様に美しく笑った。
「クレア……」
普段は容姿には全く無頓着で、リヴァイが服を仕立てて与えなければいつまでも古着を着続ける様な女だ。