第58章 奇行種の魅力
「あぁ…兵長…すみません……」
「い、いや……」
せっかくリヴァイが自分のために選んで買ってくれた物だというのになんて事だ。
指輪は決して大きいサイズではない。
アクセサリーの類に詳しくないクレアだが、それくらいは見れば分かる。
自分の手が小さすぎるのだ。
もう何度こんな想いをした事か…
支払いをしてしまったリヴァイになんて謝罪をしたら良いのだ。
気づけば大きな瞳は悔し涙やら悲し涙で潤み、鼻の頭は子供の様にみるみる赤くなっていく。
クレアは自身の“幼い”部分や“小さい”部分に過剰なコンプレックスを持っている。
リヴァイはクレアのこういった部分を含めて大好きなのだが、今まさに自分の“小さい”部分にショックを受けているクレアに、何を言っても逆効果だろう。
せっかく見つけたプレゼントだったが、かえって裏目に出てしまった。
さて…このご機嫌を損ねた奇行種…どうするか…
お互いそれぞれの想いで頭をいっぱいにしていると、店主がなんとも気不味そうにしている2人の間に入ってきた。
「ちょっとかしてごらん。少し調節してみようか…」
「え…?」
すると、店主は工具入れから小さなトンカチを取り出すと、絶妙な力加減で指輪を叩いてサイズを調節してみせた。
待つ事数分…
「ホラ、これでどうかな?」
「…………」
店主がリヴァイに渡すと、リヴァイは再びクレアの手を取った。
「あっ………」
すると、指輪はなんとかクレアの左手の中指にピッタリと入った。
「ふぅ〜、よかったよかった。お2人さん、お幸せに…」
「…悪いな、助かった。」
ホッと安心した2人の顔をみて店主の顔がクシャッっと笑顔になると、ヒラヒラと手を振って見送ってくれたため、リヴァイは数枚の硬貨をチップとして工具入れに放り投げるとクレアの手を引き立ち上がった。