第58章 奇行種の魅力
「……クレアも、そう思うか?」
「は、はい。でも兵長、こんなに沢山商品が並んでるのに、よく気づきましたね!」
「いや…なんとなく気になったから近づいて見てみたら、見つけたんだ。」
「そうなんですか…こんなに沢山ある中から見つけ出してしまうなんて、なんだか運命感じちゃいますね!」
「…気に入ったか?」
「え?あ…、あの…すみません私ったら…そんなつもりじゃ…」
シンプルな指輪だが、キンモクセイの花に見えるデザインはあまり見た事がない。
珍しいと思ったし、素敵だと思ったのも事実だが、こんな言い方をしてはなんだかねだってる様に聞こえてしまう。
自分は今さっきたらふくケーキを食べさせてもらったのだ。値段も決して安くなかった筈だ。
もう何も貰うわけにはいかないとクレアは焦りながら謝罪をした。
「おい、そんなつもりもこんなつもりもねぇ。気に入ったか気に入らないかを聞いてるんだ。ちゃんと質問に答えろよ。」
「……………」
キンモクセイはクレアが好きな花。
そして、クレアが好きだからリヴァイも好きになった花だ。
1つ1つは小さな花でも、満開になれば一面見事なオレンジ色に咲き乱れ、甘くて切ない香りを届けてくれる。
そんな大好きな花にそっくりな指輪を気に入らないなんて事はない。
「と、とっても素敵で…気に入りました。」
「そうか、分かった。おいオヤジ、コレをくれ。」
「ヘイ!毎度あり!!」
クレアの返事を聞くと、さらっと支払いを済ませてしまったリヴァイ。
「あ、ありがとうございます……」
「お嬢さん、よかったね。」
仲睦まじいカップルに見えたのだろうか。
店主は2人の様子を微笑ましく見つめるが、ある事に気づくとリヴァイの眉間にシワが寄った。
「……どの指もブカブカだ。」
「え?えぇ…?!」
リヴァイはクレアの手をとってはめてやろうとしたのだが、明らかに指輪の直径とクレアの指の太さが違っていたのだ。