第58章 奇行種の魅力
「ふうぁ…美味しかったです。兵長、ごちそうさまでした。」
結局クリームまで全て平らげたクレアはそっとスプーンを置きリヴァイに礼を言った。
「まさか残ったクリームまで食うとは思わなかったが…まぁ、満足したならそれでいい…」
「満足したなんて言葉では言い表せないくらい美味しかったです。ありがとうございます…私理想郷が見えたような気がします…」
そう言うと途端に蕩けた表情に変わる。
「その理想郷っていったい何だよ…確か前にも言っていたな。」
「そ、そうでしたか?えと…好きな物をお腹いっぱい食べられると“理想郷”なるものが見える様な気がするのです。なんかこう…ふわふわとしていてキラキラする様な感じが…兵長は見たことないですか?」
「いや、生憎俺は見た事がないな…」
「そうですか…あっ、兵長って好きな食べ物ってなんですか?」
「は?食べ物?」
「はい!そういえば私ったら兵長の好きな食べ物って何か知りません…きっと大好物をお腹いっぱい食べたら兵長も“理想郷”、見えるはずです!!」
「そうか…好きな食いもんか…」
リヴァイは食べ物にはあまりこだわりはなく、むしろどちらかというと紅茶や酒の類が好きだ。
だが、好きな紅茶や酒をたらふく飲んだ所できっと何もかわらない。
小便の回数が増えるだけだ。
きっと自分には無縁の世界なのだろう。
「俺はどちらかというと紅茶や酒だな。食いもんの好き嫌いは特にない。まぁ、甘いモノはあまり好まないが…」
「そ、そうですね…確かに兵長は紅茶やお酒ですよね…ですが兵長にも感じて頂きたかったです…“理想郷”を…」
「…おそらくそれはお前特有の感覚なんだろうよ。食って満足したならそれでいい。ほら、立てるならもう行くぞ?」
「は、はい!大丈夫です!ごちそうさまでした!」
リヴァイはクレアの頭をクシャリと撫でると、伝票を取り席を立った。