第58章 奇行種の魅力
甘い物を食べないリヴァイだが、クレアが美味しそうに食べてる姿を見るのは好きだった。
確かに目の前のありえない光景を見れば胸がやけるが、懸命に頬張り、その味を噛みしめれば悦に入り、満足そうに飲み込むクレアはなんだか見ていて面白い。
誰かに取られまいと必死に食べる犬の様にも見えるし、冬眠前に栄養を蓄える小動物の様にも見える。
リヴァイはくるくると表情を変えながら楽しそうに食べる姿に少し口角を上げながら紅茶を啜った。
「はふぅ……兵長、美味しかったです……」
カタンとナイフとフォークを置いたクレアは今にも溶けてしまいそうなトロトロの表情で感想をつげた。
「それは結構な事だ。満足してもらえたならそれで……」
と言いかけたところでクレアが何かに気づきハッと表情を変えた。
「…どうした?」
「生クリームが残ってしまってます。嗚呼…私とした事が…ちゃんと計算して食べていたつもりでしたのに……最後の方はケーキに夢中になってしまい、生クリームをかけるのを忘れてしまってました…」
「別に残ってしまったのなら仕方ないだろう。店だってもともとこんな量のクリームを完食できると思って出してねぇよ。このメニューはただの客寄せだろ…」
しかし、クレアの顔からは蕩ける様な表情は消え去り何故だかキリッと凛々しい目つきをしている。
忙しい奴だな。
いったいどうしたって言うんだ。
すると、クレアは生クリームの入っている陶器の入れ物に両手を伸ばすと、ドンッと自分の前に置いた。
オイオイオイオイ……まさかとは思うが…
「残すなんてそんなもったいない事できません。まだ食べられるので、このまま頂きます!!」
そう言うと、クレアは大きなスプーンでクリームを掬い、パクパクと食べ始めた。
「ん〜、クリームだけを堪能するのもまた贅沢ですね!!最高です!!」
「お、おい…ウソだろ…」
結局クレアは、何1つ残す事なく全てを完食してしまった。