第58章 奇行種の魅力
「兵長!!美味しいです!!」
「そうか……」
「兵長!!感激です!!」
「そりゃよかったな……」
「兵長!!私、幸せです……」
「そうかよ……」
「兵長!!」
「今度はなんだよ!!」
「この生クリーム…苺色になってます!!」
「あ?!」
鍋のような入れ物を覗くと、確かに生クリームは薄いピンク色をしていた。
クレアはまじまじと見た後、その入れ物に突き刺さっているでかいスプーンで生クリームを掬い、ケーキの上に乗せると、大口をあけて頬ばった。
「ん…!!んん!!ん〜〜!!」
口をモグモグさせながら身をよじり悶えるクレア。
口にケーキが入ってなければ、確実に押し倒していただろう。
そしてゴクリと喉を鳴らしながら飲み込むと、クレアは至高の表情でため息をついた。
「はぁ…甘い中にもさっぱりとした苺の酸味…ただ甘いだけではないこの生クリーム…最高に素敵です。ケーキとの相性も抜群です…美味しいです…生きてて…良かったです……」
トロンとした目で完全に悦に入っている。
その後もクレアは、時折ため息をつきながら、幸せそうに生クリームをケーキにかけて思う存分味わった。
「よく食うな……」
「当たり前です!!こんな美味しそうなケーキを前にして食べないなんて、えと…ケーキに失礼です!!」
「そうかよ…」
クレアは特に少食というわけではない。
周りの女兵士と同じくらいの量は食べてるし、時々食堂の職員から“小さいんだから沢山食べないと大きくなれないよ”等と言われて大盛りにされる事もあるが、残したところは見た事がない。
だからと言って毎食大盛りをがっつり食べている訳でもない。
まぁ、いたって食べる量は普通という事だ。
だが、何故か好物であるケーキ、特に苺系を使ったタルトがからむと、まるでリミッターが壊れたかのようにありえない量を食べる。
それは、食後のデザートであろうが関係ない。
この小さな身体のどこにそんな量が入るのかリヴァイは疑問でならなかった。