第58章 奇行種の魅力
そして、2人分の紅茶が注がれると残りが入ったポットがテーブルの隅に置かれた。
2人席のテーブルに所狭しと並べられたケーキ皿だったが、中央部分だけがぽっかりと空いていた。
リヴァイはここに紅茶のポットが置かれるのかと思ったのだが、ポットはテーブルの隅に置かれてしまう。
気をつけなければ何かの拍子で落としてしまいそうな程ギリギリの所だ。
これはいったいなんのためのスペースだ?
そう思った次の瞬間、リヴァイにとっては地獄絵図の様な物が目に飛び込んできた。
「ではこちらが、当店自慢の“生クリームワガママ盛り”で、ございます!!」
そう言った店員はカートから鍋の様にデカイ陶器の器に入った、ありえない量の生クリームをテーブルの中央にドンッと置いた。
「失礼致しました。ごゆっくりどうぞ。」
そして涼しい顔で去っていく店員。
テーブルにはテンションのゲージが壊れて無言で歓喜するクレア。
その向かいには、数えきれないケーキに、ふざけた量の生クリームが置かれたこの惨状に本格的に胃のあたりがムカつき始めたリヴァイ。
2人の周りに纏う気圧にあまりにも差がありすぎて、今にもテーブルの中央で台風が起こりそうだ。
「兵長…い、頂いても宜しいでしょうか?」
必死に行儀良くしようと頑張ってるようだが、ゴクリと生唾を飲み込み上目遣いでリヴァイを見つめるクレア。
瞳は潤み、目の前の苺に負けない位赤くて艶のある唇は、早く目の前のケーキ達を頬張りたいとパクパクと訴える。
その物欲しそうな視線が、リヴァイの頭の中でエロティックな展開を想像させてしまい、一瞬下半身に熱が走ったが、クレアはケーキを食べたいだけなのだ。
なんとか冷静さを取り戻すと、リヴァイはクレアの求める言葉で答えてやった。
「あぁ…お前が注文したモンだ。満足するまで食え…」
「あ、ありがとうございます!!頂きます!!」
満面の笑みで礼を言うと、クレアは早速大好物のタルトから食べ始めた。