第58章 奇行種の魅力
「あ、兵長のご注文は?」
もともとリヴァイは食べるつもりはなかったが、今のクレアの注文を聞いたせいか、何かを食べる気は起こらなかった。
「俺は紅茶でいい。お前も飲むだろ?」
「は、はい…じゃああと紅茶2つでお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」
店員は伝票を持ってくるりと背中を向けるが、メニューの端に書かれたとある文字が目に入ると、クレアはイスから身を乗り出し店員のエプロンを掴んだ。
「お、お客様?!」
「ご、ごめんなさい!!あの!!ここに書いてあるのもお願いします!!」
「……あ?!」
リヴァイはクレアが指をさしたメニューの端を見るとこんな事が書かれていた。
“生クリームのワガママ盛り、承ります♪”
と。
「……………」
なんとなくこうなるであろう事は想像できていたが、この追加注文までは想定外であった。
生クリームのワガママ盛りとはいったいなんなんだ…
ただの大盛りとは違う事は明らかだが、クレアはそれを食うのか?
ただでさえバカみてぇな量を注文していたが、本当に食うのか?この“ワガママ盛り”とやらを。
リヴァイは冷や汗をかき言葉を失ったままクレアを見るが、当の本人は胸に手を当て、運ばれてくるのが待ち遠しいと言わんばかりに目を輝かせていた。
蒼くて大きな瞳と蜂蜜色の髪の毛が窓から入る日の光に照らされ、クレアの座っている場所が別世界のように見えた。
おそらく食うつもりなのだろう……
リヴァイはこの後の展開に若干恐怖を覚えた。
数分後。
「お待たせ致しました。」
クレアが注文したケーキ達はカラカラとカートに乗せられて一気にやってきた。
カタン、カタンと次々にテーブルに並べられてゆく。
クレアはナイフとフォークを持ち、すでに臨戦態勢だ。