第58章 奇行種の魅力
「あ、ありがとうございます兵長……またあの村の苺が食べれるなんて、私嬉しいです。」
素直に礼を言って頭を下げるクレア。
顔を上げたその顔は、また眩しい笑顔に戻っていた。
「それでいい。ほら、分かったなら早く注文決めちまえ。」
「はい!!!」
大好きなリヴァイが自分のために、自分の好きな物が食べられる店を見つけて連れてきてくれた。
たった数時間かもしれない。
それでも、自分が死なずに生きて戦ってきた1年を労い祝ってくれた。
今はこの束の間の幸せを目一杯噛みしめたい。
そう思ったクレアはメニューを手に取ると、再び食い入るようにその文字を見つめた。
のだが……
「…………うぅ………う〜ん………」
「なんだ、腹でも痛くなったか?」
うめき声を上げ一向に注文が決まらないクレア。
そのただならぬ様子に声をかけると、返ってきた答えにリヴァイは呆れて2度目のため息をついた。
「どれもこれも魅力的な商品名で、決められません…わ、私はいったいどうしたら良いのでしょうか!?!」
頭をくしゃくしゃ掻き毟りながら悶えるクレアに、リヴァイは吐き捨てるように言った。
「好きなだけ注文していいと言っただろう。1つに決められないのなら、気になるのを全部頼め…」
「ナイスアイデアですが…そ、そんな贅沢を……」
すると、クレアは目を見開きながらリヴァイを見たが、リヴァイの言葉を言い聞かせるように黙ってコクリと頷くと、満面の笑みで店員を呼んだ。
「す、すみませーん!!」
「ご注文はお決まりですか?」
「は、はい…えーと、木苺のカスタードタルト1つと、完熟苺のレアチーズケーキ1つと、生クリームをふんだんに使った贅沢ショートケーキを1つと、3種のベリーの牛乳ババロアを1つと、小粒苺のミルフィーユを1つと、苺のシフォンケーキ1つと、ミックスベリーのプリン・アラモード1つと、あ、あと…木苺のカスタードタルト、もう1つ追加でお願いします!!」
「は、はい…か、かしこまりました。」
鼻息を荒くしながら次々と注文するクレアに、店員のニコニコとした愛想笑いが、引きつるような苦笑いへと変わっていった。