第58章 奇行種の魅力
「はぁ…どこまで鈍感なんだよ。どうしたもこうしたも、お前のために来たに決まっているだろう。」
「えっ?!私の…ですか??」
「……色々あってお前の誕生日、何もしてやれなかったからな。それだけじゃない。エルヴィンの目が覚めたらまた直ぐに忙しくなる。だからお前が休暇をとった今日しかチャンスがないと思ったんだ。」
「私の…誕生日…ですか?」
「本当は、またあの村まで旅行に行こうと思っていた……だが、この状況では流石に無理だからな。こんな事くらいしか思い浮かばなかった。すまないな…」
確かに自分の誕生日はこの所のゴタゴタで過ぎてしまっていたが、そんな事、クレアは気にもとめていなかった。
気づけばただ1つ歳を重ねていた。
ただそれだけだ。
しかし、リヴァイは大事な班員を失い、それでも休めない多忙な中でもこうしてクレアの事を考えていたようだ。
「そうだ、色々調べたらここは最近新しく開店した店だか、ただ新しいだけではない。昨年お前と行った村の苺を仕入れているそうだ。旅行には連れて行ってはやれなかったが、今年はここで我慢してくれ。そのかわり好きなだけ注文して構わない。」
「兵長…そ、そんな……」
「“そんな”ではない。誕生日がきたという事は、1年死なずに生きていたという事だろ?1年だ。クレア、昨年苺畑で自分が言った言葉を覚えているか?」
「え……?」
「“こんな機会、もう二度とないかもしれないから後悔しないように食べておく”と言ったんだ。自分で言っておいて覚えていないのか?お前が死なずに生きていてくれたから、俺達は一緒にいる事ができた。何も祝わないなんてできる訳ないだろ?」
「…………」
クレアは昨年苺畑で言った言葉を覚えていなかった。しかし、リヴァイがそう言うのなら言ったのだろう。
それに、リヴァイの言った事ももっともだ。
この1年で失った仲間の数は数えきれない程だ。
無事に歳を重ねる事は決して当たり前ではない。
リヴァイの言った言葉を理解するとクレアは素直に礼を言った。