第58章 奇行種の魅力
この手は何度も自分の身体を触れた手だ。
その手が自分の手を握っているだけ。
今更恥ずかしがるなんておかしな事かもしれない。
でもこんなに明るい時間に、沢山の人が行き交う街中で、手を繋いで歩くなど、クレアにとっては中々刺激的な出来事だった。
肝心のリヴァイはこの状況をどう思ってるのだろうか。
聞いてみたったがそんな勇気、生憎今のクレアは持ち合わせていない。
反対の手でざわつく胸元を押さえながら黙って歩く事しかできなかった。
ドキドキと心臓が騒ぎ出したまま歩き続ける事数分。
リヴァイはとある店の前まで着くと、歩みを止めた。
「ここ…だな。おい、着いたぞ。」
「は、はい!!えと…兵長、ここは…いったい…」
店構えを見ると、白いペンキで塗られた外壁に、ピンクの屋根。
おまけに扉も窓枠もピンクだ。
外見だけではなんの店だか分からない。
こう言ってはなんだが、リヴァイには無縁のような、あまりにも可愛すぎる店だ。
ここにいったいなんの用事があるのだろうか。
「中に入ればわかる。ほら、入るぞ…」
そう言って扉を開けると、目に飛び込んできたのはクレアの想像をはるかに越える光景だった。
「あ、あぁ……へ、兵長?!ここは!!!」
まずクレアの目に飛び込んできたのは大きくてキレイなガラスのショーケース。
中には宝石の様にキラキラと光り輝く赤い果実がふんだんに使われた様々な種類のケーキが並べられていた。
「最近新しく開店したケーキ屋だ。季節の果物を中心に扱う店だそうだ。ちょうど今は苺の季節だからな。ショーケースは見事に苺一色だな。」
「えぇ?!!!そうなんですか?こんなお店ができたなんて…私知らなかったです!!!」
クレアがショーケースの前で目を輝かせながらケーキを見ていると、店員がやってきて2人を座席に案内した。