第58章 奇行種の魅力
「お待たせしました!!」
クレアは馬具を片付けてデイジーの身体に軽くブラシをかけると、急いでリヴァイの元へと戻った。
「よし、行くぞ…」
「は、はい……」
ぶっきらぼうにそう言うと、先に歩き出してしまうリヴァイ。
目的地などまったく分からなかったが、クレアは追いかける様に後ろをついて行った。
しばらく歩くと、賑やかな商店街が見えてきた。
「…………」
リヴァイはポケットから小さな紙を取り出すと、まじまじと見つめ、また歩き出した。
「あの、兵長…いったいどちらへ……あっ……」
「まだ秘密だ……」
小さな紙をポケットにクシャリと戻すと、今度はクレアの手を取って歩きだす出す。
そして、リヴァイは歩きながら握っている手を、指と指が交差する様に握り直した。
「……っ!!」
その瞬間にクレアの頬はボンッと赤くなり、心臓がドクドクとせわしなく高鳴りだす。
そして、パニックになっている頭で、アレコレ考える。
これは、もしかしなくても…デートというやつなのだろうか。
リヴァイとは、ディナーには行った。
旅行にも行った。
人気のない田舎道なら歩いた事がある。
ハンジ達もいたが夜の酒場にも行った事もある。
だが、まだ明るい時間にゆっくり街中を歩いた事など今まであっただろうか。
まわりをよく見れば、家族連れにカップルなど、笑顔で往来していく人々が目に飛び込んでくる。
若い男女は皆手を繋ぎ、腕を組み、実に仲が良さそうだ。
「…………」
兵舎内で人目のつく所でリヴァイはあまりこういったスキンシップをしない。
普段は、お互いの立場をわきまえた態度か、もしくはリヴァイの部屋でまったく真逆なスキンシップを超えた濃厚な接触のどちらかだ。
よくよく思い返せば自分達は両極端な事しかしていない。
“仲良く手を繋いで街中を歩く”
そんな恋人同士ならまず1番最初にやるべき事を今までまともにしてこなかったため、クレアはこの状況に少し戸惑った。