第57章 託す想い
「私はマリアが言っている事、間違いだとは思わない!!」
「…お姉ちゃん………」
クレアは迷う事なく断言しマリアを見つめた。
何か自分の中で見つけ出せるモノがあるのならば、それを貫いて欲しい。
そんな気持ちでいっぱいだった。
「ありがとう……」
マリアは真っ赤に腫れてしまった目元を少し擦りながらクレアに礼を言った。
「私、2人の想いがつまったこの大切な遺品を、ずっと大切に持っていたい。そして、私の元で2人には安心して眠ってもらいたい。だから、絶対に私は死なない。何があっても生きて、生き抜いて、守り続けたい。自分の命を守って、2人の安らかな眠りを守り続ける事で、私は…戦う。……って、ちょっとカッコつけちゃったかな?」
「マリア……」
死なない事を“戦い”と決めたマリアの目に、もう涙はなかった。
まだ10歳の少女だ。
自分より10歳も年下なのだ。
自分が10歳だった時の事を考えると…きっとこんな立派な選択などできなかったであろう。
クレアはマリアの立派な選択に深く感嘆した。
「マリア…すごいよ…立派だよ…私、マリアの決断に賛成だよ。立体機動装置を使う事だけが戦いではない。私も、生き抜く事だって立派な戦いだと思う。だから…私にも…応援させて!!」
すると、涙の消えたマリアの顔が、今日の青空の様にパァッと明るくなる。
「本当に?!ありがとう…!!私も戦うよ!!お姉ちゃんやエルドさん、クレアお姉ちゃんとは違う形でだけど、頑張って戦ってみる…だから…こんな私を応援してくれると…嬉しいな。」
そんな事、聞かれなくたって応援するに決まっている。
「応援してるよ!!ずっと、ずっと私はマリアの事応援する!!やっぱり、マリアの所に持ってきて正解だったわ。」
「ありがとう…みんなが託してくれた想い。私が守ってみせる!」
すると、マリアはクレアの前で拳を胸に当て、敬礼をしてみせた。