第57章 託す想い
「そうなの……?」
「うん…兵長はフレイアと親しくしていた私に渡してくれてんだけど、もし自分以外に持っていて欲しい人がいるならその人に渡してくれって言われてたの。最初は、大事なフレイアと優しかったエルドさんの形見。自分が持っていたいと思ってたんだけどね…」
「う、うん……」
真剣な表情でクレアをみつめるマリア。
この先の話をするべきかどうかクレアは一瞬迷った。
だが、この形見にはフレイアとエルドの戦果だけではなく、リヴァイの想いもつまっているのだ。
全てを伝えるべきだと思ったクレアは続けた。
「だけど…私も調査兵だから……いつ死ぬか分からない。これは、調査兵ならどうしても避けることのできない現実なの。だから、もし、私が死んだら…この大切な形見はまた持ち主を探す事になる。誰かが死んで…死んでは持ち主を探す。そんな悲しい負のループは私で止めなくてはいけない。そう思ったらマリアの顔が浮かんだ。これはマリアが大切に持っていてくれれば、きっと2人も安らかに眠れるはず。そう思ったから今日私はここに来たの。」
「クレアお姉ちゃん……」
調査兵である以上避けては通れぬ“死”のルート。
包み隠さず真実を明かしたクレアの言葉にマリアの心の中の何かがコトンと揺れた。
フレイアは戦う姉の姿を見て自分も兵士を目指そうと思っていた。
それが、父を、母を殺した巨人への復讐になると思っていたからだ。
姉の背中を見て兵士を目指そうと思った。
姉が死んでからはその意志を継ぎ自分も戦おうと思っていた。
いまでもすぐに思い出す事ができる。
目の前で父と母を食った巨人の顔を……
「……………」
だが、違った選択肢もあるのではないかとマリアは気づく。
「ねぇ、お姉ちゃん……クレアお姉ちゃんも…死んじゃうの??」
「え…?」
マリアは声を震わせながらクレアに問いかけた。