第57章 託す想い
「クレアお姉ちゃん…ごめんね……」
「謝らないで。マリアが謝る事なんて1つもない。寧ろ、謝るのは私の方。こんな知らせばかりで……本当にごめんなさい……」
「ううん…お姉ちゃんだって、こんな知らせをしにくるの、辛かったはず。悲しいのは…私だけではないから……」
「マリア……」
涙は流れているが、少し落ち着きを取り戻したのだろう。マリアはクレアの事を気遣い始めた。
今なら渡せるだろうか。
クレアはポケットに入れてある小さな布袋を取り出すと、マリアに差し出した。
「マリア…これ、もしマリアさえよければ受け取って欲しいの……」
「…え?…私に?」
「うん……」
渡された小さな布袋をひっくり返すとキラリと輝きながら出てきたのはピンク色の石がついたネックレス。
これは、マリアにも見覚えがあった。
「クレアお姉ちゃん…これって……まさか…」
「そう、フレイアが大切に持っていたものだよ。マリアは知ってると思うけど、そのネックレスはエルドさんがフレイアに贈った物なの。訓練が休みの日にはいつもつけていたわ。だから、フレイアが亡くなった時、贈り主のエルドさんに、フレイアの遺品として渡したの。」
「そうだったの……?」
「うん…フレイアとの想い出が詰まったそのネックレス、エルドさん、毎日肌見放さずつけてたんだよ。エルドさんの遺体を確認できたのは、リヴァイ兵長だけだったんだけど、そのネックレスを持ってきたのは兵長の判断だったんだ。」
「あの…有名なリヴァイ…兵士長が……?」
マリアは実際にリヴァイの顔を見た事はなかったが、当然名前は知っていた。
「そう…本当はこのネックレスはそのままエルドさんにつけたまま送ってあげるのがいいとは思ったみたい。でも、遺しておきたかったんだって…」
「え……?」
「このネックレスは2人が調査兵として勇敢に戦った戦果として、誰かの元で大切に持っていてもらいたいって…リヴァイ兵長は、そう言ってた…」