第57章 託す想い
「クレアお姉ちゃん…コレって…」
顔を曇らせ真剣な表情でクレアを見るマリア。
しかし、もう治りかけてる火傷だ。
「ビックリさせちゃってごめんね!!昨日まで包帯を巻いていたんだけど、もう必要ないって言われてとったの。もう治りかけてるから心配いらないよ。それにしてもマリア、背伸びたね。私が見上げないと顔も合わせられないわ。」
「…本当に……大丈夫なの?」
「うん!大丈夫。」
そう言って笑顔で答えると、少しホッとしたようにマリアはクレアの隣に座った。
いよいよ今日来た目的を話さなければ。
クレアの心臓は緊張でドキドキと心拍数が上がってしまう。
「ねぇ、今日はどうしたの?訓練はお休み?来たのはクレアお姉ちゃんだけ?」
無邪気に問いかけるマリアにクレアはゴクリと唾を飲み込み重い口を開いた。
「あのね…今日は…マリアに伝えなくちゃいけない事と…渡したい物があって…きたの…連絡も入れないで急にごめんね!」
「……え?」
クレアの言葉で再び表情を曇らせヒヤリとした感覚が走ったマリアだったが、マリアは自分自身に言い聞かせる。
自分の肉親は全員死んだ。
慕っていた姉さえも死んだのだ。
もう悪い知らせが来るはずがない…と、必死に言い聞かせるが、クレアの顔は少し強張り言い出しにくそうだ。
いったい、いったい今度はどんな悲しい知らせなのだ。
マリアはこの場から逃げ出したい衝動に駆られたが、奥歯を噛みしめ膝に置いた拳をギュッと握ると、クレアの目を見て答えた。
「な、なんですか…伝えたい事って……」
懸命に戸惑いを隠しているマリアを前に、クレアは胸が苦しくなったが、自分には伝える義務があるのだ。クレアは包み隠さず正直に伝えた。
「あのね、マリア……エルドさんが、亡くなったの…」
「え…エルドさんが……」
わずか10歳のマリアには酷な報告だ。
血はつながってないが兄のように慕っていたエルドだ。
そのショックを受けた顔に、クレアはどうしようもなくやるせない気持ちになってしまった。