第57章 託す想い
「え?えぇ?!そんな事無いから!!」
本家本元のヒストリアの発言に、今度はクレアが慌ててしまう。
だが、アワアワと慌てていると背後からドスのきいた低い声が厩舎内に突如響いた。
「おいガキ共!こんな所で何油売ってやがる。」
「リ、リヴァイ兵長!!」
「出発が完了したか確認しに来てみればなんてザマだ。とっとと目的地へ迎え!俺とコニーが到着するまでに準備は完璧に済ませておけよ!」
「は、はい!!!」
リヴァイの一喝でみな散り散りになって急ピッチで準備を整えると、リヴァイから逃げる様に出発してしまった。
104期の新兵が去ってしまうと嘘のように静まり返る厩舎。
すると、リヴァイの盛大なため息が響く。
「あ、あの…兵長…?」
「こうなってるんじゃないかと思って来てみれば案の定だ。」
「…え?!」
「この俺に何度言わせるんだ…お前は新兵達に構いすぎだ。ホラ、マリアの孤児院に行くならさっさと行って、さっさと帰ってこい……」
リヴァイはまだ出発をしていなかったクレアにも文句を言うと、手早くデイジーの背に鞍を乗せて腹帯を締めてしまう。
「わっ!!キャッ!!兵長?!」
すると、リヴァイは軽々とクレアを持ち上げて、デイジーに乗せてしまった。
「気をつけて行ってこいよ……帰ってくるの、待ってるからな。」
「そ、それは…いったいどういう…」
今朝の執務室でもそんな事を言っていたが、リヴァイは自分に何か大事な用事でもあるのだろうか。
せめてそこだけでも聞きたかったのだが、リヴァイはデイジーの尻をパチンと叩いて発進の合図を出すと、クレアには背を向けダスゲニーの馬房まで行ってしまった。
『ブルルルルン!!!』
尻を叩かれたデイジーは発進の合図と思い、兵門めがけて走り出す。
「あっ……!!」
リヴァイの言葉の意味がイマイチわからずモヤモヤしたが仕方ない。
クレアは手綱を短く持ち直すと、真っ直ぐマリアのいる孤児院へと向かった。