第57章 託す想い
「おはよう…あれ、みんなって…もしかして…」
コニー以外の104期が厩舎までやってきたという事は今日がその日なのだろう。
「はい。兵長とハンジさんから指示が出たので、これから私達は身を隠すために山奥の小屋まで行ってきます。」
104期のエレンとヒストリア。
この2人は多くの謎がある上に、大きな危険も孕んでいる可能性も高い。
ミカサのケガの回復を待ってから移動するとクレアは聞いていた。
コニーは先日のラガコ村での調査報告をエルヴィンにするために、エルヴィンが目覚めるまで居残りが決定している。
そのため、コニーを抜いた6人で本日先に出発する様だ。
「みんな、気をつけてね…山奥じゃ不便も多いと思うから…それと…ミカサは絶対に無理しちゃ駄目よ!!」
「はい…もう治ったので大丈夫です……」
「ううん!絶対にまだ治ってないから!!」
「クレアさーん!ミカサ、さっきまで腹筋してましたよ?」
「えぇ?!」
「サシャ…余計な事を言わないで……」
「ミカサぁ……」
やはりミカサは医師とクレアの制止も聞かず、筋トレをしていた様だ。
クレアはミカサの身体を心配したが、当の本人は至って涼し気な表情で出発の準備をしている。
無理をしているような様子は感じられないが、まさか本当に大丈夫なのだろうか?
折れていた骨がこんな短期間でくっつくわけがないのだが…
クレアはミカサのその強靭な身体の作りにただただため息が漏れてしまった。
「それにしても、クレアさんは今日は訓練じゃないんですか?……私服…珍しいッスね…」
すると、ジャンがクレアの私服姿が珍しかったのか、声をかけた。
普段は兵服か、夜廊下ですれ違う事があってもヨレヨレの部屋着を着ていたため、今朝の姿はいささかギャップがあった。
だがそう感じたのはジャンだけではないだろう。
人形の様な一際目立つ顔をしたクレア。しかし兵舎では着古したロングワンピースを着ている姿しか見た事がない。
そのため、ジャンの1言で皆クレアの服に注目してしまった。