第57章 託す想い
「なので、私も訓練なのですが…実は私、ちょっと行きたい所があるんです。ハンジさんが許可して下さったら今日はお休みを頂きたいと思ってます…」
「お前が休暇申請か?珍しいな…どこに行くんだ?」
「えっと……マリアのいる孤児院です。」
「…孤児院?」
「はい…この前、兵長が私に託して下さったフレイアとエルドさんの遺品であるネックレス。私なりに考えてみたのですが、フレイアの妹であるマリアに持っていてもらうのが1番かなと思いまして…ずっと渡しに行けるタイミングを探していたんです。」
「……そうか。」
「本当は私が持っていたいと、何度も思ったんです。ですが、私も調査兵…勿論死にたくなどありませんが、私が死んだらあのネックレスはまた次の持ち主を探さなくてはなりません。そんな事になったらきっとフレイアもエルドさんも安らかに眠る事はできないですよね。なので、私が持っているべきではないと、判断したんです。」
調査兵団の兵士。
殆どの兵士がそう遠くない未来に死が待っている運命の元日々戦っている。
弱い奴はすぐに死ぬ。
だが、弱くない奴も死ぬ時は死ぬのだ。
エルド、グンタ、オルオにペトラ、それにミケ…
彼らは決して心身共に弱くはなかった。
寧ろ、強いからこそ死んでしまったと言っても過言ではない程だ。
だからクレアの言っている事は間違ってはいない。
しかし、遺品の1つでさえ自由に持つ事が躊躇われてしまうこの運命に、リヴァイの心もギュッと棘が刺さるように痛んだ。
「分かった。お前の気が済むようにすればいい。だが、用事が済んだらすぐに帰ってこい。寄り道はするなよ…」
「ど、どうしてですか?」
特に寄り道をする予定はなかったが、そんな事を言われてしまえば気になってしまう。
「それは帰ってきたら話してやる。それより、休暇申請出しにハンジの所へ行くんだろ?ここはもういい。さっさと申請出して、用事済ませて俺の所に帰ってこい。…分かったな?」
「あっ…兵長……?」
リヴァイは、さっさと行けとクレアを執務室から追い出すと、ソファに座り直し紅茶を飲みながらある事を考え始めた。