第56章 新成ハンジ班!始動!!
「クレア…」
「はい……」
2度、3度、視線を左右に泳がせてから遠慮がちに目を合わせたクレア。
今のハンジやケイジへの態度を見る限り相当怒っているに違いない。
決して怒られたくはないが仕方がない。
クレアはグッと歯を食いしばり、両拳を力いっぱい握った。
のだが……
「はぁ…ハンジに執心するのも大概にしろ。」
「え……?」
「おいクソメガネ、サインしたら俺の執務室まで持ってこいよ。」
クレアの予想に反してリヴァイの声色は優しく、そっと抱き寄せて頭に触れるだけのキスを落とすと、持っていた書類を置いて執務室を出て行った。
「あーもー!!リヴァイの奴いったいなぁ!!」
少し沈黙した執務室だったが、ハンジが頭をさすりながら起き上がるとモブリットが書類を手渡した。
「兵長が怒るのも無理ありませんよ…あれだけの事をして、むしろこれで済んだのだからラッキーですよ。」
「リヴァイはクレアが絡むと急に器が小さくなるからやんなるよ。小さいのは身長だけで十分だっつーの!!」
モブリットから書類を受け取ると、目を通しながらサインをするが、ブツブツと文句のおまけ付きだ。
「ハンジさん!!俺、俺……リヴァイ兵長から鳩尾グリグリされたんですよ!!本気で死ぬかと思いましたよ!もうこんな役どころ勘弁ですからね!!」
「なんだよケイジまでー!」
なんやかんやと文句を言っていたハンジだったが、そろそろ出発しなくてはならない時間だ。
増刷した資料は今日1日で売り切ってしまわなければならない。
翌日以降からは知人や友人を介して情報が回っていくため段々と価値が下がるのだ。
皆で手分けして広範囲に一気に売りさばく短期決戦だ。
ハンジが最後の書類にサインを書き終えると、製本し終わった山からそれぞれの担当分を取り、早速出発の準備にとりかかった。