第56章 新成ハンジ班!始動!!
時刻は間もなく夕方。
昼食はとったが、まともに休憩もしていない。
無茶な事に慣れているモブリットとクレアはまだそこそこ大丈夫だったが、ニファにケイジにパドリックは相当疲弊している様に見えた。
出口の見えないこの作業に身体は悲鳴を上げているのだろう。
「ハンジさん、売り上げ目標は何部ですか?」
「んーと、この値段で売ったとしても、200部は売りたいなぁ。」
200部……
現在完成しているのは100冊弱。
折返し地点は見えてきている。
「分かりました。では一旦休憩を取りましょう!!」
「え?!」
思ってもみなかった提案にハンジはあんぐりと口を開けてしまうが、そんなのに構うことなくクレアはアレコレと忙しそうに動き始めた。
「まず、窓を開けて換気しましょう!淀んだ空気では疲労がたまる一方です。」
クレアが窓をあけると、春の柔らかくて爽やかな風が部屋に舞い込んで、ガラッと空気の重みが変わった。
「ちょっと私、席を外しますね!すぐに戻ります!」
「え?えぇ?!ちょっと!クレア?」
水を入れたヤカンに火をつけると、クレアは大急ぎで執務室を出ていった。
「クレア…いったいどうしたのでしょうか…?」
「わ、分からない……」
しかし、10分後。
「すみません!!戻りましたぁ!!」
意外にも早くクレアは息を少し上げながら戻ってきた。その腕に“あるモノ”を抱えて。
「もうビックリしたなぁ!どこいってたの?」
「ごめんなさい!ちょっと調理場であるモノをわけて貰ってきました。今用意しますのでお待ちください。」
そう言うと、クレアはちょうど湯が湧いたヤカンを片手に紅茶の用意を始めた。