第9章 駈けだす想い
今日は精鋭揃いのリヴァイ班との合同訓練だ。
クレアはパンパンと両頬を叩き、気合を入れるが、実のところは少し気持ちが浮ついていた。
今朝、リヴァイに紅茶を淹れたのは、仕事を手伝う上での自然の流れであった。
だが、自分の淹れた紅茶を褒められた事が、自分自身でも信じられないくらい嬉しかったようで、さっきから胸がドキドキしている。
「ダメだ!もっと気合を入れないと!!」
クレアはバシバシと頬を叩いて、訓練モードに切り替えた。
すると
「クレアー?どうしたの?大丈夫?可愛い顔が腫れちゃうよ!」
ハンジが心配そうに顔をのぞき込んできた。
「ハンジさん!あ、あの!壁外調査も間近なので、いつも以上に気合をいれてました!」
「あーもー、ほっぺが真っ赤!気合いれすぎだよー!もう少し力ぬいてー!」
「す、すみません!あ、そういえば、リヴァイ兵長が、ハンジさんは壁外調査が近づくと更に暴走するからうちの班員を巻き添えにするなと伝えておけ……といわれました……ハンジさんも気合入れすぎないで下さいね!」
「リヴァイも厳しいこと言ってくれるなー!壁外調査が近くなるのにテンション上げるなってほうがおかしいだろ!」
壁外調査が近くなると周りはピリピリしだすだけではなく、少し気持ちが不安定になったり、遺書を書く者もでてきたりして、少しずつネガティブな雰囲気になってくる。
そんな中、いつもの調子を崩すことなく暴走してくれるハンジは、初の壁外調査に、少なからず緊張しているクレアにとっては、側にいてとても安心できる存在であった。
やっぱりハンジにはいつもの通りにハイテンションでいてもらいたい。
「(ハンジさん、やっぱり今のは無しです!思いっきり気合入れていきましょう!)」
そうハンジに耳打ちすると、クレアはいたずらっ子のような悪い笑顔を向けて、森の中に消えて行った。
「そうこなくっちゃ!ひゃっほー!!」
ハンジも悪い笑みをこぼし、負けじとクレアを追いかける。
2人は、その後ろでため息をついているモブリットの存在に気づくことなく、訓練開始の時刻となった。