第55章 ハンジ班!新結成!
「……あっ…す、すみません……」
リヴァイの声でビクッと肩を震わせると、パチリと目を開けたクレア。
その開いた瞼から見える瞳はどこまでも澄みきっていて、どこまでも深い蒼色をしている。
この美しく愛しい瞳が映すものは、無惨にも巨人に食われていく同胞達ではなく、いつだって自分だけであって欲しい。
そしてこの愛らしい大きな目から流す涙は、悲しみで流す涙ではなく、自分が与えた快楽に打ち震えながら流す涙だけであって欲しい。
どんな男の目にも触れさせず、残酷な景色も見せず、自分の腕の中だけに閉じ込めてしまいたいと何度願った事か。
「…………」
その硝子玉の様な美しい蒼色の魅力に囚われ吸い込まれてしまったリヴァイは、しばしの間言葉を発する事ができなくなってしまった。
「……兵長…??」
「……!?」
何も言わなくなってしまったリヴァイを不安そうに見つめ声をかけるクレアの声でハッと我に返る。
……そんな事、兵士である以上無理な話。
特にクレアは、シガンシナ区の生家に両親の遺体を残してきてしまってるのだ。
ウォール・マリアを奪還したい想いは誰よりも強いはずだ。
「…なんでもない……。」
カーテンの隙間から差し込む朝日を浴びているクレアの姿は、その肌も、その瞳も、髪の毛の先1本1本に至るまで、全てが芸術品の様に美しい。
そんなクレアは、いつだって遠慮の欠片もなく自分の理性のタガを外し、壊そうとしてくる。
クレアに出会ってからは、とにかく冷静さを保つ事でいつも苦労させられっぱなしだ。
「そう…ですか……」
だがそんな想いに気づきもしない無自覚鈍感奇行種は、キョトンとした表情でリヴァイを見つめると、促されるままベッドに横になった。
「ハンジも言っていた通り、膨大な仕事が待っている。せめて今日だけでもゆっくり休めよ。」
「は、はい……ありがとうございます。」
リヴァイは何度か額を撫でると、最後にキスを落として医務室を出ていった。