第55章 ハンジ班!新結成!
「いや…いるだろう。お前の身近に。何日も風呂に入らずあの頭ん中でどんな虫がわいてるか分からねぇ不衛生極まりない分隊長だ。アイツの髪に使ったモノはいくら俺に従順なダスゲニーでも怒り出すだろうよ。」
「兵長…それはハンジさん…の事ですね……」
「あ?他に誰がいるんだよ。」
「そ、そうですね……」
そう言いながら、複雑に絡んだ長い髪を少しずつ束に取り丁寧に梳いていくリヴァイ。
「……………」
静かな医務室で、クレアはベッドに座りながらリヴァイに髪を梳いてもらっていると、ここ数日の出来事が嘘の様だ。
壊れ物を扱うかのような繊細で優しい手付きに、心地良さを覚え、クレアは思わずコクリコクリと船を漕ぎ出してしまった。
「………ん?!」
全ての髪の毛を梳かし終えると、長い蜂蜜色の髪の毛は再び艶を取り戻し輝き出す。
そんな姿に満足していると、クレアの頭がコクコクと揺れ出した。
「なんだよ…寝ちまったのかよ。」
面白くて少しその姿を見ていたリヴァイ。
閉じてしまった瞼。
でも口元は緩く弧を描き目を瞑りながらも微笑んでる様だ。こんなあどけない表情で気持ち良さそうに眠る少女が、その身体と命を賭けて上官を庇ったなんて、誰が想像できるだろうか。
だが、クレアはもう“少女”という年齢ではない。
そんな事を考えていたら、大事な事を思い出したリヴァイ。
「(……コイツの誕生日。何もしてやれなかったな…)」
104期の入団前から今までにない忙しさで働いてきた調査兵達。
クレアの誕生日はちょうど先日行われた壁外調査の数日後だった。
不覚にもクレアはリヴァイが忘れてしまっている間に20歳を迎えてしまった。
リヴァイは自身の不甲斐なさに盛大なため息をつくが、今すぐ何かを用意してやれるモノでもない。
「クレア…寝るならちゃんと横になれ…」
リヴァイは後でゆっくり考えようと決めると、前後に揺れている愛しいクレアに声をかけ起こした。