第54章 裏切り者の戦士
「ライナー…やるんだな!?今…!ここで!!」
「あぁ!!勝負は今!ここで決める!!」
させない!!!
「ミカサーーーッ!!!」
エレンを奪われてはならない。
クレアがミカサの名を呼ぶと、瞬時に飛び出したミカサは躊躇う事なく腕ごと首を跳ねようとライナーに切りかかった。
私はベルトルト……
狙いをベルトルトに絞る。
「……………っ!!」
クレアは躊躇ったつもりなどなかった。
しかし、今まで受けてきた訓練は対巨人だ。
対人格闘の訓練もしてきたが、本気で人を殺す訓練などしてきていない。
ーザクッ!!!ー
躊躇ったつもりなどなかったが、ベルトルトに刺さった刃はあと一手、急所を外してしまっていた。
人間の肉を、筋肉を、繊維を血管を切り裂いていくおぞましい感触が拳の中から脳髄にむかって刺激をする。
巨人のうなじを削ぐより何千倍ものおぞましい感触にクレアは嘔吐感にも似た不快感に襲われた。
「あ…あぁ…!!!」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「エレン!!逃げてっ!!!」
急所を外したクレアを庇うようにミカサはベルトルトにトドメを刺そうと飛んできたのだが……
ードカッ!!!ー
「きゃあああ!!!ミ、ミカサーー!!?」
ベルトルトのピンチを回避するために、腕を切り落とされたライナーが、クレアとミカサに渾身の体当たりをすると、2人をまとめて壁上から吹き飛ばしてしまった。
「ベルトルト!!!」
「エレン!!逃げろ!!」
騒ぎに気づいて駆け寄るアルミンがエレンに逃げろと叫ぶ。
「う……ウソ……でしょ……?!」
ライナーに吹き飛ばされ宙に舞ったクレアの瞳に映ったモノ。
それは5年前にシガンシナ区を襲った超大型巨人と、鎧の巨人だった。