第54章 裏切り者の戦士
ーガラガラッ!!!ー
「いててて……」
みっともない失態に少し気不味そうに起き上がると、その下には自分の身体よりはるかに小さなクレアが仰向けになり心配そうにエレンを見つめている。
「…エレン、大丈夫?!みんな心配するから無理しないで?!」
「あぁ!!え?え?クレアさん?ゴ、ゴメンナサイ!すみません!!」
「え…??」
ヨロけながら起き上がったクレアの髪はキレイにまとめられていたが今の衝撃で少し乱れてしまっている。
乱れたまとめ髪で心配そうに自身を見つめる真っ直ぐな蒼い瞳にエレンの心臓は全速力で駆ける馬のように高鳴ってしまった。
こんなクレアを押し倒してしまった様な所をリヴァイに見られてしまったら……確実に削がれるだろう。
リヴァイの不機嫌な顔が頭によぎったエレンは、必死に平謝りをしながらクレアの手を引き立たせてやった。
「そ、そんなに謝らないで!!エレンは何かあったら大変だから…104期のみんなと一緒にいて。ここは…私達で片付けるから……」
立ち上がりブレードを握り直すと、クレアはニッと口角を上げてエレンの顔を見上げた。
「クレアさん…」
「おーい!!エレン!!」
これは、立体機動の訓練の時に見た事のある好戦的な顔。その勝ち気でサディスティックな表情でさらに心臓の鼓動が加速してしまうが、クレアは背後からエレンの名を呼ぶ声が聞こえると、巨人の討伐へと向かってしまった。
「……お前ら……!!」
「じゃあね!エレン、怪我しないでね!!」
ー数十分後ー
「これで最後か……?」
「ユミル!!ユミル!!」
ハンジが袖口で汗を拭いながら辺りを見渡し、巨人がいない事を確認すると、クリスタが瓦礫を蹴飛ばしながらユミルまで一目散に走って行った。