第54章 裏切り者の戦士

すると、クレアの後を追っていたハンジ達も到着すると、すぐに討伐の命令が出された。





「後続は散開して周囲を警戒！！他全てで巨人が群がっている所を一気に叩け！！」




「はい！！！」




「……！？！」




命令を下したはいいが、何故かその命令の対象外になっている人物から威勢のいい返事が聞こえてくる。

それと同時にハンジの横を猛スピードで通り過ぎていく兵士が1人。




「ちょっと！ちょっと！！あんたは攻撃しなくていいから！！」




命令の対象外になっていたのはエレン。

エレンは壁の穴を塞ぐために同行させたのであって、生身で戦う戦力としては数えていなかった。

むしろ逆だ。

エレンはまだ獲得しきれていない能力を秘めている可能性が高いのだ。

無茶な討伐に入って死なれたりしては溜まったものではない。

しかし、エレンは“巨人を駆逐したい”という想いからか身体が疼き、ハンジの制止も聞かずに巨人の群れに向かって行ってしまった。




「コラーーーーーー！！！」




必死に叫ぶも、エレンはアンカーを射出して巨人のうなじめがけて一直線だ。




「死ねぇっ！！！」




ーザクッ！！！ー




勢い良く振るったブレードは見事巨人の急所を深くえぐったのだが……



「やった！！討伐数1！！………っう、うぉっ！！」



倒れてくる巨人に、空中でバランスを崩したエレン。



「エレン！！危ない！！」



素早く飛んできたクレアが正面から抱きとめる様にエレンを庇うと、2人はそのまま瓦礫の上に倒れ込んでしまう。



「馬鹿野郎！！下がってろって言ってんだろエレン！！」



「は…はい…すいません……」



近くにいた年上の兵士が一喝すると、エレンは素直に謝った。
やる気だけは人一倍だが、やはり訓練と実践とではその感覚に雲泥の差がある。

実践での経験を積んでこそベテラン兵士になるのだと痛感させられた。