第53章 謎と疑惑と真実
「ほら、クレア行こう!」
「あっ…ハンジさん!」
「ん?!」
西側に用意されたリフトに向かおうとすると、クレアは人混みからリヴァイ達が戻ってきた事に気付き声をかける。
「モブリット…ちょっと待って。」
壁が破壊されたかもという情報を受け、内地に雪崩込んでくる民を見てきたリヴァイとニック。
ニックは“自分自身に問う”と言っていたが、何か心境の変化はあったのだろうか。
「…何か…気持ちの変化はありましたか?」
気持ちの変化も何もない…
あの雪崩込む民を見て何も感じないわけ無いだろうとハンジは思ったが、焦る気持ちをグッとこらえて問いかける。
「……………」
しかし、変わらずだんまりだ。
「時間が無い!!分かるだろ?!話すか黙るかハッキリしろよお願いですから!!」
今は一刻も早く壁の破壊場所まで向かわねばならない。
こんな所で問答している時間は無いのだ。
第一、話す気になったから自分の所に来たのではないのか?
焦りが、もどかしさが、苛立ちに変わり、ハンジは声を荒げてしまう。
「私は話せない。他の教徒もそれは同じで変わる事は無いだろう…」
「それはどーも!!わざわざ教えてくれて助かったよ!!」
「……それは…」
「!?」
ブチ切れたハンジはクレアの手を引きニックに背中を向けるが、ニックの話にはまだ続きがありそうだ。
「それは…自分で決めるにはあまりにも大きな事だからだ。我々にはあまりにも荷が重い……」
「どういう事だ…」
「我々は代々強固なる誓約制度を築き上げ、壁の秘密をある血族に託してきた。我々は話せない。だが…壁の秘密を話せる人物の名を教える事ならできる…」
「……それは、責任を…誰かに押し付けて、自分達の身や組織を守ってきたって事?」
「…そうだ……」