第53章 謎と疑惑と真実
「私は…覚えていません…」
とミカサ。
3人ともアニが、ライナーとベルトルトと同郷だったという事実がにわかに信じられないといった様子だ。
「イヤ…でも、同期のオレから言わせてもらうなら…その疑いは低いと思います。無口なベルトルトは置いといても…ライナーはオレ達の兄貴みたいな奴で…人を騙せるほど器用じゃありませんし…」
「そうか…アルミンはどう思う?」
「僕もエレンと同じです。ライナーは僕とジャンとで“女型の巨人”と戦ってます。ライナーは危うく握り潰される直前で………って……あれ…?」
「どうした?」
「ライナーは握り潰される直前に逃げられたんだけど…アニは急に方向転換して、本当にエレンがいる方向に走って行ったんだ。僕も…推測でエレンは中央後方にいるんじゃないかと話したけど…アニに聞かれる距離ではなかったし…」
「何だ…そりゃ……」
「んん…?話をしてたって…その3人で?ライナーがエレンの場所を気にしてる素振りは無かったの?」
「そ…それは…」
ハンジの質問に何故だかドキドキと心臓が煩く拍動し、指先が冷たくなる感覚を覚えたアルミン。
しかし、そんな中でも頭の中は怖いくらいに冷静にあの時の事を分析している。
ーじゃあ…エレンはどこにいるってんだー
当時の記憶を手繰り寄せると、確かに自分の頭はライナーとした会話を覚えていた。
鮮明にライナーのあの時の声と言葉が頭の中で響いたのだ。
「エレンの場所の話をしたのは…ライナーにその事を聞かれたからでした…」
「なんだよ…ソレ…」
それにアルミンはずっと疑問だったとある事を思い出す。
「僕は…あの時、ジャンに向かって叫んだんです。“右翼側で本当に死に急いでしまった死に急ぎ野郎の仇だ!”って…アニがエレンを探しているのならもう一度右翼に確認しに行くはず…でも…アニは…迷わず中央後方に向かって行ったんです……もしかしたら…あの時、“女型の巨人”が凝視してた手の平に、刃で文字を刻む事もできたのかもしれない………ライナーなら…!!」
滅茶苦茶な推測かもしれない。
でも、友情や常識にとらわれ“普通”に考えては駄目なのだ。
巨人はいつも予測不可能な攻撃をしかけてくる。
こちらもそれ相応に発想を変えなければならないのだ。