第53章 謎と疑惑と真実
だがゆっくりしていられないのはレイチェルも同じ様だ。持っていた書類をハンジに渡すと後ろ手を振り来た道を戻って行ってしまった。
「分隊長…レイチェルさんに何を頼んでたんですか?」
「あぁ…これかい?アニの身辺調査の情報を内密に欲しいって彼女に頼んでたんだ。」
「アニの…ですか?」
“アニ”というワードにエレンもミカサもアルミンも一斉にハンジを見た。
「まさか、こんなに早く持ってきてくれるとは思わなかったけどね。あぁ…今度会ったらなんか奢らされそう。ま、しかたないか………ん?!」
カラカラと笑いながら書類に目を通していたハンジだったが、急にその顔が真顔に変わる。
「ハンジさん……?!」
「ねぇ、モブリット、ちょっとみんなを馬のいる所まで呼んできて…」
「え…?」
「早く!!」
「はい!!」
「クレア達はこっち!!」
モブリットがそれぞれ準備にあたっている兵士達を呼びに走るとハンジはクレア達を連れて少し人混みから離れた蹄洗場まで連れて行った。
「ど、どうしたんですか?」
皆が揃うとハンジは周りに聞き耳を立てている人物がいないかどうか確認してから書類に記載されている内容を話し始めた。
「……アニの身辺調査の結果に…104期に2名ほどアニと同じ地域の出身者がいると書いてある。ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバー。」
「……え?」
「まぁ…5年前当時の混乱のせいで戸籍資料なんかどれも大雑把な括りでいい加減なもんだ。でも、この2人は壁外調査で“誤った”作戦企画書によってエレンが右翼側にいると知らされていたグループだ。アニ・レオンハートこと“女型の巨人”が出現したのも右翼側だったわけだが…これだけで何が決まるってわけじゃないけど…訓練兵時代の3人の関係性などが知りたい。どう思う?」
その問いかけに3人は戸惑いながら答える。
「…ライナーとベルトルトが同郷なのは知ってましたが、アニがその2人が親しい印象はありません。」
とアルミン。
「オレも…2人がアニと喋ってるのはあまり見た事がないような…まぁ…アニは元々喋らなかったけど…」
とエレン。