第53章 謎と疑惑と真実
「あの…モブリットさん?あの方は…」
よく状況が飲み込めなかったクレアはモブリットに問いかけた。
「あぁ…分隊長と話してるのはレイチェル・ランダーさん。憲兵団に所属していて、分隊長とは訓練兵時代からの同期だ。」
すると、クレア達の視線に気づいたハンジも彼女の事を紹介した。
「ごめんごめん!彼女はレイチェル。私の同期なんだ。憲兵団に所属してるけど、まだ腐りきってないよ!アハハ!!」
「失礼な事言うな!私はまだどこも腐ってない!新鮮だ!」
そう言いながら持っていた書類の束でハンジの後頭部を思い切りはたくレイチェル。
「いってぇーーー!!」
すると、呆気に取られていたクレアを見たレイチェルは、ニコニコしながら近づきその手を握った。
「初めまして、あなたがハンジが可愛がってるクレアね?手紙に書いてあった通りに可愛いわ!ハンジはお風呂に入らないし、散らかすし大変でしょ?あなたは訓練兵団主席で卒業したんですってね?もしハンジの不衛生に我慢できなくなったら私に連絡頂戴。私の部下として迎えてあげるわよ!」
この非常事態にも関わらず、レイチェルはニコニコしながら堂々とハンジの目の前でヘッドハンティングをして見せた。
「え?そ、そ、それは……」
グイグイと顔を近づけてクレアの返事を急かすレイチェル。
鎖骨辺りまでのウェーブがかった艶のあるブラウンの髪に、キラキラの黒い瞳。
ほのかに香る石鹸の様な香りはハンジとは正反対に清潔感が伺える。
しかし、この気さくという度合いを超えた“グイグイ”感。
また、決して周りに染まらない1本筋の通った様な強い目力。
なかなかハンジの同期であり友人であるには相応しい人物だ。
クレアはかすかに頭の片隅で“類は友を呼ぶ”という言葉が横切っていった様に感じた。
「ちょっと!それはダメだ!断じて許さん!クレアがいなくなると色々と公私ともに困るから絶対ダメ!!」
そう言うと2人の間に無理矢理割り込み断固拒否をするハンジ。
「はんっ!分かったわよ。部下に仕事押し付けてきちゃったし、私も急いで戻らなきゃ。この話は保留にしといてあげるわ。」