第53章 謎と疑惑と真実
リヴァイは皆のいる前で、かけられる精一杯の言葉を絞り出しすと、真っ直ぐにクレアを見つめた。
脚を負傷しているリヴァイの同行はここまでだ。
しかし、ハンジは討伐力も判断力もある。
アルミンはハンジに負けない頭脳を持っている。
そしてミカサにクレア。
この2人の能力は説明する必要もない。
リヴァイはそれぞれに声をかけると、無表情のまま馬車を降りた。
エルミハ区は巨人の壁の破壊の知らせを受けて避難してきた人間でごったがえしていた。
無理もない。
ウォール・ローゼが破壊されてしまえば、戦う術の無い一般の民衆は内地に避難するしかないのだ。
避難民はまだまだこれから大勢流れ込んでくるだろう。
「ここから先はもう巨人の領域になるからね。」
「エレン、馬には乗れそうか?」
「はい、身体の力が戻ってきました。」
「よし、じゃあ準備だ!急ごう。」
モブリットがエレン達を馬の所へ連れて行こうとすると、人混みの中からこちらに向かって大声で叫ぶ声が聞こえてきた。
「ハンジーーーー!!」
「え?!あれ?!レイチェル?」
「あぁ!!良かった!間に合った!!」
ハンジからレイチェルと呼ばれた女兵士は憲兵団の紋章を付けたジャケットを着ていて、馬の手綱を持ってこちらに向かってきた。
そしてその手には数枚の書類が握られている。
「ほら!頼まれていたモノ。集まったから持ってきたよ!!」
「え?もう?こんなに早く?ってかこんな非常時に持ち場離れて平気なの?」
「あん?!何よ!アンタが急ぎで必要だと思ったからわざわざ追いかけてまで届けたんでしょうが!人がせっかく馬走らせてきたってのに第一声がソレか?!」
「わっ!わっ!ごめん!ごめんってば!レイチェル、本当に助かった!感謝する!恩に切る!この通り!」
「はぁ?!レイチェル“様”だ!!」
「レイチェル様ぁ!!」
モブリットはこんな2人のやり取りをいつも通りの表情で見ていたが、クレア達はいったい何事かとポカンとしてしまった。