第53章 謎と疑惑と真実
「なるほど…少数だけなら一気にウォール・マリアまで行けるのかもしれないのか…」
エレンがその身1つで破壊場所を塞げるのであるならば、破壊された部分を補修するための大量の資材は必要なくなる。
資材を必要としないのであれば、立体機動装置を身につけた兵士達で一気に馬で駆ければよいのだ。
そこでまたアルミンは閃く。
「ハンジさん…夜間に壁外の作戦を決行するのはどうでしょうか?」
「え…夜……に?」
「はい!巨人が動けないとされている夜にです!松明の明かりだけでは、最高速度で馬をはしらせることはできません…ですが、落とした速度でも、人数さえ絞れば夜明けまでにウォール・マリアへ行けるかもしれません。」
「…………」
アルミンの冷静で的確な提案に、ハンジ達は真っ暗な未来に少し光が差し込んだ様な気持ちにさせられた。
「状況は絶望のどん底なのに…それでも希望はあるもんなんだね…」
「えぇ…ただし、全てはエレンが穴を塞げるかどうかに懸かっているんですが……」
そう…
これはエレンの力無しでは叶わぬ作戦なのだ。
「…こんな事聞かれても困ると思うんだけど…それって、できそう?」
「………」
ーガラガラガラガラ…ー
エレンはまだ巨人化を全てコントロールできてるとは言えない。
だが、アルミンの考え出した提案はきっと確実に人類の希望となるはずだ。
そのため、皆を落胆させてしまうような事は言えず、エレンは言葉を詰まらせてしまった。
「できそうかどうかじゃねぇだろ……」
すると、黙っていたリヴァイがそんな態度のエレンに少し苛立ちながら呟く。
「やれ……やるしかねぇだろ。こんな状況だ…兵団もそれに死力を尽くす以外にやる事はねぇはずだ。必ず成功させろ…」
「…は、はい!!オレが必ず穴を塞ぎます…か、必ず……」
リヴァイの言う事は正論だ。
調査兵団の兵士全員例外なく死力を尽くすのだ。
何がなんでも応えなければ…
頭では分かってはいるが、大きな期待が両肩にズシリとのしかかり、自身の意思とは反してエレンは小さく手が震えてしまった。