第53章 謎と疑惑と真実
エレンはまだ眠っていたため、先に物資や馬等の準備にとりかかった。
壁の破壊された場所を特定し、侵入してきた巨人を掃討しながら塞がなければならない。
しかし、リヴァイ班の班員は4人とも戦死、そして精鋭部隊だったミケ班、ナナバ班、ゲルガー班も、現在は戦闘を避けながら情報の拡散をしていると言うが、安否は不明だ。
できる限りの備えを持って且つ直ぐに出発をしたいのだが……
「ハンジさん!何してるんですか?!急いでるんです!早く準備をして下さい!!」
「分かった!分かったから待って〜!」
「待てません!!!」
この非常時だというのに、ハンジはモブリットとクレアに準備を押し付けると、どこから持ってきたものかは不明だが顕微鏡を使い、分厚い本とにらめっこしながらあーでもないこーでもないと言っている。
いったい何をしているのだろうか。
ひとまず持っていた荷物を荷台に積み戻ってきたが、まだ1人でブツブツと何か言っている。
「ハンジさーん!!間もなくエレン達も準備が終わります!もう急いで下さーい!!」
「分かった!分かったからそんなに大きな声出さないで〜!」
ハンジはハンジで調べたい事があったのだが、現場へ急行しなければならない事も承知の上だ。
持っていた物をポケットにしまうと、ハンジはクレアの背中を追いかけるように走りだしたのたが……
「あっ!!」
何かを思い出したのかピタリと止まって振り向くクレア。
「ど、どうしたの…?」
「ハンジさん、お手洗いは大丈夫ですか?しばらく行けませんよ?」
いきなり真顔で振り返るから何かと身構えたハンジだったが、クレアの口から出たのはハンジのトイレを心配する言葉だった。
「人を年寄り扱いするな!!大丈夫だよ!もう!……あ、でもやっぱり行っておこっかな…」
「分かりました。では私は先に行ってますね!!」
「う、うん…」
優秀な部下を持つと、トイレの心配までされるのかと…ハンジは苦笑いをしながらトイレへと入って行った。