第53章 謎と疑惑と真実
「侵入経路は分からない…俺が見たのは10体程の集団だった。だが、その数が増えてるのかどうかまでは…」
「トーマ、ミケ達と104期はどうしている?」
エルヴィンが問いかけるとトーマは敬礼をし答える。
「は、はい!ミケさんの指示で4つの班にわかれ、戦闘は可能な限り回避し、情報の離散に努めよとの事でした。しかし、巨人が一斉に走りだしたため、ミケさんが囮になって、単独行動になってしまいました。今現在、他の班と合流できたかどうかは…不明です。俺は…エルミハ区に伝達をしてからここにきました。」
「そうか……」
壁が破壊されたとなれば、隔離をしていた104期の新兵は“現時点では白”という事になる。
「そんな…ミケさんが……」
ミケはリヴァイに次ぐ実力を持った兵士だ。
しかし、巨人の集団の中に囮として飛び込んで行くなどとても無謀な行動だ…
クレアは104期が離れた施設で隔離される事は知っていたが、こんな事が起こるなど想像もしていなかったため、これからの事を考えると指先が小さく震えだした。
聞けば104期の新兵は武装する時間もなく、丸腰の状態で走り回ってる。
もし本当に壁が破壊され、次々に巨人が侵入しているのなら彼らの安否は絶望的だ。
トロスト区の襲撃での恐怖に負けずに志高く入団してきてくれた104期。
クレアの胸はキリキリと痛みだした。
「ハンジ、リヴァイ…現状を確認しに行く。直ぐに準備だ。区長…申し訳ないのですが、緊急事態ですのでこれで失礼させて頂きます。」
「………………」
ウォール・ローゼが破壊されたとなれば、ストヘス区だって緊急事態だ。
今回の会議では、憲兵団に潜んでいた女型の巨人アニの捕獲により、エレンの王都への召還、引き渡しは保留となり、ただちに解散となった。