第53章 謎と疑惑と真実
「つまり…無駄骨なのか?」
「奴らの1人を拘束しただけでも価値があると思います。そう…奴らは、必ずいるのです。1人残らず追い詰めましょう。壁の中に潜む敵を…全て……」
エルヴィンがアルミンの立案を元に仕掛けた作戦は1つではなかった。
アニの仲間は調査兵団の104期にいる可能性が高いと踏んで、エレンを護送車から逃がす今回の作戦の間、何も知らせずローゼ・南区の施設にて待機命令を出していたのだ。
所属兵団はあの惨劇、トロスト区襲撃事件以後に変更する事も可能だった。
壁を壊した奴らが、巨人化できるエレンを連れ去りたい理由があるのならば、必ず調査兵団に入団している筈だ。
そう踏んだエルヴィンは、アルミンの作戦に邪魔が入らぬよう、何も知らせず104期を遠ざけたのだ。
アニを捕えた様に、他の仲間も残らず調査兵団の手で捕まえてみせる。
そうエルヴィンが自身の心にも言い聞かせた時だった。
ーバタンッ!!!ー
「エルヴィン団長!!大変です!!!」
会議室の扉がノックも無しに勢いよく開いたと同時に、扉を開けた兵士が息を切らしながらエルヴィンを叫ぶように呼んだ。
「トーマ?!」
入室してきた兵士はミケ班所属のトーマだった。
ミケ班はローゼ・南区の施設で104期の見張りをしているはずの兵士。
血相を変えてとびこんでくる事態に、エルヴィンもハンジもリヴァイも厳しい表情となる。
「ウォール・ローゼが…!突発されました!!」
「ちょっと…トーマ…どういう事!?」
「どうもこうもない!!104期を隔離している施設の南方から巨人がいきなり現れたんだ!壁が破壊されたかは確認できていないが、トロスト区やクロバル区がやられたのだとしたら報告が入るだろう?」
ハンジがテーブルの真ん中に置いてある水差しを取りトーマに駆け寄ると、トーマはひったくるように取り上げ水を飲み干した。