第53章 謎と疑惑と真実
今回の一件で、調査兵団の幹部召還の話はひとまず保留となったが、調査兵団の独断で作戦が実行された事に対し、その是非が問われた。
「エルヴィン…今作戦についていくつか疑問がある。目標の目星がついていたのなら、なぜ憲兵団に協力を依頼しなかった。」
「区長…それは女型の仲間がどこに潜んでいるか分からないからです。この最重要任務を遂行するにあたっては、潔白を証明できる者のみで行う必要我ありました。」
区長の厳しく追求にも、エルヴィンは毅然と答える。
憲兵団の協力を依頼しなかった事を疑問に思っている様だが、エルヴィン達からしてみれば、この財産や地位をでっぷりと溜め込んだ区長が、憲兵団の内部の状態を果たしてどこまで知っているのか…
おおいに疑問だった。
「壁内に潜伏していた“女型の巨人”…アニ・レオンハートを特定した事は評価する。しかし、それによって区が受けた被害についてはどうお考えか?」
「被害は出さぬよう挑みましたが、住民の財産や尊い命を失わせる結果になってしまいました。我々の実力が至らなかったためです。深く…陳謝します。その一方で、奴を逃がし、壁が破壊されれば被害はこれだけでは済まなかった…そういう天秤を踏まえて実行に移したのも事実です。」
実際ここまでの作戦を決断し、実行できたのは、エルヴィンが団長を務める調査兵団だったから可能だったと言っても過言ではない。
1つ1つの命を軽んじるなど、決して許される事ではないが、壁が破壊されてしまう事と天秤にかけるなど、実際に巨人の驚異を目の当たりにしてきた調査兵団でなければできない判断であった事は間違いない。
淡々と話すエルヴィンの瞳にも迷いはなかった。
「人類の終焉を阻止できたとの確証はあるのか?アニ・レオンハートからは何も聞き出せていないのだろう?」
「彼女は現在地下深くに収容されています。全身を強固な水晶体で覆われているため、情報を聞き出す事は不可能です。」