第53章 謎と疑惑と真実
「え?えーと…特に何も言われていないから、この施設から出なければ大丈夫だと思うわよ。」
「そうっすか…なんかずっと地下室にいるのも息苦しいので、俺一旦上に上がります。」
「大丈夫よ。ハンジさんに伝えておくから…中庭あたりで休憩でもしてて?」
「そうします…」
「ミカサはどうする?会議、出たかったらアルミンと同席もできるよ?」
「あ、私は…ここにいます…」
身じろぎ1つせず眠ったままのエレンを心配したのだろう。
ミカサは地下室に残る事にした様だ。
「わかった。何か困った事があったら会議室まで来て。」
「はい……」
クレアはエレンをミカサに任せると、アルミンとジャンと共に地下室を出て行った。
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その頃、会議室では……
「おいハンジ……」
「ん?何…?!」
ハンジは配られていた資料に目を通していたのだが、不機嫌そうな声によって中断させられてしまった。
「返却だ……」
「は…??」
よく分からないといった表情でリヴァイを見るが、差し出された手には、先程クレアの手に巻いてやったハンカチが握られている。
クシャクシャにしわがついて、オマケに謎のシミまであり、掠れた血がついているそれは、間違いなくハンジのハンカチだった。
「えー?なんでリヴァイが私のハンカチ持ってるの?せっかくクレアの手当に使ったのに!?」
「あぁ?手当だと?戯けた事ぬかすな。こんな不衛生でどんな細菌が繁殖してるかも分からねぇモンクレアの傷口に使うんじゃねぇよ。」
「細菌が繁殖って…失礼だね!!そこまで汚くない!」
「いや…そこまで汚いだろ……」
2人の衛生観念はまったく正反対で、この手の話はいつだって平行線だ。
お互いがお互いに理解のできない価値観に盛大なため息をついたが、ちょうどその時クレアがアルミンを連れて会議室に入ってきたため、この水掛け論は中断となった。
アルミンとクレアが敬礼をして入室すると、ざわついていた会議室が一瞬でシンとなり、この日を総括する会議がスタートした。