第53章 謎と疑惑と真実
話そうとしないクレアにリヴァイは焦れて不機嫌顔だ。
それにここは憲兵団の施設。
こんな所を誰かに見られてしまってもまずい。
中々の失態をしてしまい、あまり話したい内容ではなかったが、この様子では観念するしかなさそうだ。
クレアは目をそらしたまま気不味そうにボソボソと話し始めた。
「あの…実は…アニにはあんな形で逃げられてしまい…私本当に悔しくて…そしたら…怒りで我を忘れてしまって……ハンジさんに叱られてしまいました…」
「あ?何だよそれ…じゃあこの赤くなってる頬は、あのクソメガネにビンタされたって事か?!」
「…うぅ…は…はい。」
「で、この手の不衛生極まりないハンカチは何だ?」
リヴァイは間髪入れずに後ろに回された手を取ると、容赦なく問い詰める。
これでは蛇に睨まれた蛙もいいとこだ。
「こ、これは…怪我をした私に、ハンジさんが巻いて下さいました。“無茶はするな”と、言われてしまいましたが…」
「ったく、クソメガネが…ビンタした上に細菌だらけのハンカチで傷口を覆うとかフザケたマネしやがって…これのせいでクレアの手が化膿でもしたらどう落とし前つけてくれるんだ。」
リヴァイはそう文句を言いながら、スルリとその手に巻かれたハンカチをほどき、自分のポケットに入っている、シミもシワもない真っ白なハンカチでその小さな手に巻こうとしたのだが、クレアは慌ててリヴァイの手を振り払ってしまう。
「い、いけません!兵長…」
「あぁ?!どういう意味だ…」
「兵長のキレイなハンカチが…汚れてしまいます。それに、血は出ましたが、傷は小さいのでもう痛くはありません。なので、大丈夫です。」
「大丈夫なわけないだろ!こんなに傷だらけだ…いったいどんな無茶をしたらこうなるんだ…これから会議で消毒できるのは何時間も後だろう。ちゃんと巻いておけ。」
そう言うと、有無を言わさずクレアの手はリヴァイのキレイなハンカチによって巻き直されてしまった。