第53章 謎と疑惑と真実
それぞれの幹部が会議室に続々と入って行くのを確認すると、クレアは急いで地下に続く階段まで走って行ったのだが、階段を降りようとした所で突然声をかけられた。
「クレア……」
「………っ!!」
この耳に心地良く響く低音の声に自身の名前を呼ばれ、クレアの胸はドキッと跳ねてしまう。
「…リヴァイ…兵長……」
振り返れば愛しい声の主が無表情のままコツコツと踵を鳴らして近づいてきた。
「…あ、あの……」
リヴァイは無言でクレアの前までくると、戸惑い揺れる大きな蒼い瞳をじっと見つめる。
「………」
そして、クレアの赤く腫れた目元を、細かな傷がついた頬を、細くて骨ばった指で優しく撫でた。
心なしか頬も赤く腫れているようだ。
「あっ………」
その指はまるで、壊れ物を扱うかのように優しく、繊細にクレアを撫でる。
「この傷はどうした……」
「こ、これは……」
右頬についた切り傷をとっさに右手で隠すが、その手に巻かれたいかにも不衛生なハンカチが目に入ると、リヴァイの眉間にギュッとシワが寄ってしまう。
「それになんだよ、この汚ぇハンカチは……」
「あ、あぁ……」
頬の傷以上にもっと見られたくない物を見られてしまい、今度はその手を後ろに隠してしまった。
「女型の中身…アニを捕えた時に出現した水晶を砕こうと思ったのですが…力任せに砕こうとしたら刃の方が粉々になってしまって…破片で切ってしまったみたいです…」
「…ったく無茶するな。それに…泣いたのか?あとなんで右の頬が赤いんだ。」
「う……」
次々と聞かれたくない事を質問され、クレアは思わず視線をそらしてしまう。
「なんだよ。俺に言えない事なのか…?」
ジリジリと詰めより、クレアを廊下の壁まで追い詰めると、リヴァイはトンッと片手をついた。