第8章 迷える想い
クレアは走りながら必死に考えた。
聞けないものをあれこれ考えたって仕方がない。
昨日のことは全てが不可抗力の事故だったのだ。
あれこれ考えれば考えるほどおかしなことを想像してしまう。
こうなれば………しかたない……
「もう忘れよう!」
クレアは残る疑問に蓋をし、忘れることにした。
「フレイア!お待たせ!」
「クレアお帰り!待ってたよ。」
フレイアから改まって話がしたいと言われたのは初めてだ。クレアはどんな話をされるのか、内心ドキドキしていた。
「クレアお風呂まだでしょ?一緒に入ろう。その時に色々話すよ。」
「うん、いいよ。」
2人は荷物をまとめて大浴場に向かった。
夜10時も過ぎると、大抵大浴場はすいているが、この日は運良く誰もいなかった。
「「やったぁ、貸し切りみたいだね!」」
クレアとフレイアは身体を洗い、洗髪をすると、2人で湯船につかった。
「うーーーん!今日も疲れたぁ…」
クレアが伸びをしながら湯につかると、さっそくフレイアは本題に入った。
「ねぇ、話、してもいい?」
「う、うん!いいよ…」
大浴場の浴室は急にかしこまったような空気になる。
「あのさ……クレアって……その…好きな人とかって…いる?」
フレイアは口元を半分湯につけ照れくさそうにブクブクしている。
「ん?好きな人?兵団内で?んーと、もちろんハンジさんかな。」
「ブーーーーッ!!」
思わずフレイアは吹き出した。
「クレアのバカ!違う!そうじゃなくて!異性で好きな人はいる?って聞いてるの?」
「え?!えーーー?」
これは、まさか、もしかしなくても、恋バナというヤツであろうか?
クレアは恋などしたことがないので、当然好きな人がいた事もない。
フレイアには申し訳ないが、正直に告白するしかなさそうだ。
「ゴメン…フレイア…恥ずかしいんだけど、私、恋をしたことがないの…だから好きな人とかよくわからなくて…」
「そうなんだ……変な事聞いてゴメン。」
「ううん。フレイアは?好きな人…いるの?」
「んー、自分でもよくわからないんだ……でも……」
「でも………?」